ホテルをチェックアウトし、外へ出た。
その瞬間、眩しいほどの太陽の光が、
一斉に私へ降り注いできた。

あまりの眩しさに、思わず手をかざす。
そして——やっぱり、来てくれた。
私の風が、迎えに来てくれた。
ずっと待ちわびていたかのように、
一斉に私のもとへ駆け寄り、
ふわっと体を包み込む。

髪がたなびき、ブラウスが揺れた。
ああ、やっぱり朝はいい。
今日は、いつもの朝より少し遅い。
だから、光もいつもとは違う。
風も、いつもとは少し違っていた。

駅へ向かって少し歩けば、
大きな川が流れている。
光と風と水。
優しく、温かく、柔らかな
自然の神秘に包まれながら歩いていると、
昨日少し無理をした体も、
はしゃぎすぎた心も、
少しずつなめらかに癒されていくようだった。

今朝、露天風呂で昨日を脱いだ私に、
今度は光と風と水が、
新しい今日を
着せてくれているような気がした。

さあ、今日の私の一日の物語が始まる。
風さん、お待たせ。
一緒に向こうの町へ帰ろう。
そして、11:00に間に合うように、帰ろうね。

少し早めにホテルを出たから、
時間には余裕があった。
地下街を歩きながら、ふと思いついた。
そうだ。
うなぎの蒲焼きを買って帰ろう。
それから、家族に頼まれている諸々のものも、
今のうちに買ってしまえばいい。
そうすれば、仕事が終わってから
寄り道をしなくても済む。

我ながら、なかなかいい思いつきだと
思ったのだけれど——残念。
早すぎた。
どのお店も、まだオープン前だった。

長いお盆休みに入る前、
最後の出社日でさえなければ、
せっかく一泊の出張に来たのだから、
もう少しのんびりして、
昼から出勤するか、
いっそのこと「テレワーク」と言いながら、
少しゆっくりしていたかった。

でも、今日だけはそういうわけにはいかない。
お休みに入るのは嬉しい。
そのぶん、この最後の一日は、
きっと慌ただしくなる。

とりあえず、ホームへ入ってきた電車に乗ろう。
まだ時間には余裕がある。
今日は、時計の針を
何度も気にしなくても大丈夫。

ホームに立っていると、
また風が戻ってきた。
今度の風は、少しだけ温かい。
風も私を迎えに来るために走り回って、
ちょっと体が火照ってしまったのかしら。

そんなことを思うと、おかしくなって、
ひとり小さく笑った。
「じゃあ、一緒に帰るよ」向こうの町へ。
そして今日は、あなたも私と一緒に出社よ。
そう風に軽く声をかけながら、
私は電車に乗り込んだ。

二日ぶりに逢えた風を連れて、
今日もまた、私の一日が動き始めた。