余裕を持って、
心を弾ませながら、風とともに帰る。
本当なら、そんな帰り道になるはずだった。
ところが、予想外の電車の遅れ。
そのうえ、ようやく乗り込んだ車内は、
まるで朝の通勤ラッシュのような
超満員だった。
人と人との隙間もないほど
ぎゅうぎゅうに押し込まれ、
だんだん気分まで悪くなってくる。
時計を魅るたび、
心だけが先へ先へと走っていった。
電車の中で食べようと思って買っておいた、
大好きなパン屋さんのハムチーズサンド。
車内で食べるつもりだったから、
簡単に包んでもらい、
おしぼりまでつけてもらっていた。
なのに、袋を開くどころか、
腕を少し動かすことさえためらうような
混み具合だった。
結局、11:00からの会議には
少し遅れることになった。
ここまで遅れるのなら、もういい。
あまりにもお腹が空いていたから、
ハムチーズサンドだけは食べてから参加した。
やっと口にできた、大好きな味。
ほんの少しだけ、
朝から乱れていた心が戻ってきた気がした。
11:00から始まった会議は、
12:30に終わった。
次は13:00から打ち合わせ。
車で30分ほど
見ておかなければならないから、
そのまま慌てて飛び出した。
私は乗せてもらっているだけだから、
身体は楽ちんなはずなのに、
頭の中だけは忙しい。
今日これから何をするのか。
どの順番なら、いちばん無駄なく動けるのか。
今日のうちに絶対に済ませて帰りたい。
明日からのお盆休みを、
何ひとつ気にせず、
心置きなくゆっくり過ごすために。
次はこれ。
その次はあれ。
頭の中では予定が、ぐるぐる、ぐるぐると
回り続けていた。
お盆だから道路も混んでいるかもしれない。
そう思って30分ほど余裕を見ていたのに、
意外にも車はすんなりと進み、
予定より少し早く目的地に着いた。
あと10分。たった10分なのに、
今日はその時間が、
とても大きく感じられた。
涼しい車内に身体を預けて、
ようやく動くことをやめた。
窓の外をぼんやり魅つめる。
風さんも、ここまでついてきてくれたかな。
そんなことを思った。
すると、車の外では、
慌てっぱなしだった私を、
風が心配そうに魅つめているような気がした。
そして、涼しい車内をそっと流れる風が、
親友のように寄り添ってくる。
焦らないで。慌てないで。大丈夫。
少しだけ、ここで休んでいけばいい。
そんな声が聞こえた気がした。
朝から予定は狂いっぱなしだった。
何度も時計を魅て、
何度も心だけが先へ走った。
それでも最後には、
ちゃんと小さな余白が残されていた。
たった10分の、何もしなくていい時間。
その小さな隙間へ、
風はするりと入り込み、
慌てん坊の私の心をそっと撫でてくれた。
やっぱり、風はやさしい。
ひとつ深く息を吸う。
さあ、もう大丈夫。
風と一緒に、次の扉へ向かおう。
風がくれた10分✨
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