テレビでも観ながら、
お風呂の時間までごろごろしていよう。
そう思っていたはずなのに、
結局、別のことに夢中になってしまった。
一人ファッションショー。
昨夜、しばらく着ていなかった半袖や
ノースリーブのブラウスを出し、
薄い生地のスカートを並べ、
夏によく着ていた
懐かしいワンピースも引っ張り出した。
明日からの横浜に向けて、
これで準備は整ったはずだった。
でも、ふと思った。
いざ横浜で着てみて、
似合わなかったり、
きつかったり、
反対に緩すぎたりしたら、
ちょっと格好悪い。
だったら、今のうちに全部着てみよう。
そう思ったのが始まりだった。
スカートとブラウスを組み合わせては着替え、
鏡の前に立つ。
これはいい。
これは、こっちのスカートの方が合うかな。
いや、こっちのブラウスも可愛い。
そんなことを考えながら、
着て、脱いで、また着て。
懐かしいワンピースも試着してみた。
そして、ずっとしまったままになっていた
ミニスカートのセットアップ。
買ったものの、
少しスカートが短すぎる気がして、
なかなか着る勇気がなかった。
でも今年の夏は、
思い切って着てみることにした。
久しぶりに袖を通し、鏡の前に立つ。
やっぱり、ちょっと短いかな。
そう思いながらも、
なんといっても涼しい。
足元を風がすうっと通り抜けていく。
気持ちいい。
やっぱり夏は、風が通る服に限るわ。
そう思った途端、
ますます調子に乗ってしまった。
あれを着て、これを着て。
さっきのブラウスをもう一度合わせてみたり、
違うスカートを穿いてみたり。
まるで本当にランウェイでも
歩いているような気分で、
一人で勝手に盛り上がっていた。
気がつけば、
お風呂に入るつもりだった時間は、
とっくに過ぎている。
時計を見ると、もう18時になろうとしていた。
やばい。
それなのに、まだ全部出していない。
ワンピースも、ノースリーブのブラウスも、
セットアップも、スカートも、
まだまだいっぱい残っている。
それをまた広げて、
一人ファッションショーをするのも楽しそう。
なんだか不思議だ。
二年ほど前、
同じような服を着ようとしたときには、
妙に恥ずかしく感じた。
「こんなの、もう着られないかな」
そんなふうに思ったような気がする。
なのに、今着てみると、
意外とそうでもない。
服が変わったわけではない。
鏡が変わったわけでもない。
もしかすると、
変わったのは私なのかもしれない。
そんなことまで考えながら
夢中になっていると、
少しだけ外の空気が吸いたくなった。
ベランダへ出る。
そろそろ日が暮れ始める頃。
まだ明るさを残した青い空に、
いくつもの雲が浮かんでいる。
その雲が、夕暮れ前の光を受けて、
キラキラと輝いて見えた。
そして今日の風が、
軽やかに私の周りを舞っている。
もしかすると、この風。
さっきまでベランダの窓の向こうから、
私の一人ファッションショーを
覗いていたのかもしれない。
「意外と似合ってたわよ」なんて、
笑いながら言ってくれているような気がした。
そう思うと、私まで少し可笑しくなった。
今日は一日、風がよく吹いていた。
真夏なのに、
どこか涼しくて、
心まで軽くなるような一日だった。
そして、明日は横浜へ旅立つ。
横浜は、どんな空なのだろう。
どんな風が吹いているのだろう。
青い空を魅つめながら、
はるか向こうにある
大好きな横浜の街を思い浮かべる。
すると、向こうの方から、
ひときわ大きな風が吹いてきた。
髪がふわりと揺れた。
ああ。風が私を呼んでいる。
横浜の風が、私を呼んでいる。
もしかすると、
明日の旅立ちを待ちきれなくなって、
横浜からひと足先に
私を迎えに来てくれたのかもしれない。
こちらの風と出逢い、
ひとつになって、
「明日、一緒に帰ろう」
そう囁いているようだった。
夕暮れ前の空の下。
私はしばらく、風の中に立っていた。
横浜からやってきた風と、
ここで私を見守ってくれている風。
二つの風が私の周りで軽やかに舞いながら、
明日、私が旅立つその時刻を、
今から楽しみに待ってくれている。
横浜の風が迎えに来た✨
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