月に一度の和歌山旅。
今日はいつもと少し違って、
横浜から直接和歌山へ向かった。
打ち合わせもいつもより一時間早く、
10:30から。

和歌山駅まで車で迎えに来てもらう。
横浜駅に比べれば、
和歌山駅はずいぶん素朴に見える。
けれど、私は『暴れん坊将軍』が好きだから、
この地へ来ること自体が
いつも少し楽しみなのだ。

駅を出ると、よく晴れていた。
暑い。
けれど、その暑さの中を、
紀州の風が潮の香りをまとって吹いてきた。「あ、来た」
私についてきた風さんと、
和歌山の風さんたちが、
約一ヶ月ぶりの再会を喜んでいるようだった。

そして和歌山駅に着いて、
迎えの車へ向かう前に、
私が真っ先にしたこと。
ローソンへ行った。

お目当ては、
関西ご当地の塩昆布マヨからあげクン。
買ったら、すぐに食べる。
うん。
これは横浜で食べた
麻辣湯味のからあげクンより、私好み。
塩昆布の旨味が、なんともいい。

風さんが横で笑っているようだった。
「着いて早々、それなの?」
そんな声が聞こえてきそうだった。

そして迎えの車へ。
そのまま打ち合わせ先のオフィスへ向かった。
一ヶ月ぶりのメンバーと再会し、
少し雑談をして、それから打ち合わせ。
一時間と少し。

久しぶりに顔を合わせるから、
仕事の話だけでなく、
自然と笑い声も増える。
やっぱり私は、
こういう時間が好きなのだと思う。

そして打ち合わせがひと段落した頃、
聞かされた。
「鰻屋さん、予約してるよ」……鰻?
心の中で、しゅん。

今日はすっかり蕎麦のつもりだった。
長浜のそば八の記憶から、
何もつけない蕎麦、水、塩、生粉打ちせいろ、
無一物中無尽蔵まで、
私の心は完全に「そば旅」になっていたのに。
でも、
予約してくださっているものは仕方ない。

12:00を少し過ぎた頃、
和歌山駅近くの
「二与呂」という鰻屋さんへ向かった。
そしてメニューを見て、
思わず笑ってしまった。
鰻重 将軍。
しかも、二尾。
暴れん坊将軍のお膝元で、将軍をいただく。
これはもう、食べるしかない。

運ばれてきた鰻は、
炭火の香りをまとっていた。
箸を入れる。
外は香ばしく、中はふっくら、
じゅわっとジューシー。
ああ。これだ。
私が好きな鰻の蒲焼は、やっぱりこれ。
香ばしく焼けた表面と、
口の中でほどけるような柔らかい身。
懐かしい味だった。

ただ一つ、失敗したことがある。
……からあげクン、食べなければよかった。
てっきり今日は蕎麦だと思っていたから、
駅に着いてすぐに食べてしまったのだ。
さすがに鰻二尾は、なかなかの迫力。
とはいえ――
私の鰻の蒲焼・過去最高記録は、二尾半。
だから今日の二尾は、
堂々の歴代第二位ということになる。

……我ながら、よく食べるものだ。
ご飯は半分以上残してしまったけれど、
鰻はきれいに完食。
お腹いっぱい。
そして、心もいっぱい。

一ヶ月ぶりのメンバーとの会話も楽しくて、
笑いながら食卓を囲んでいると、
「ああ、だから私は、
和歌山に来るのが好きなんだ」と思った。

海がある。
潮の香りがある。
紀州の風がある。
そして、また一ヶ月ぶりに会える人たちがいる。

食事を終え、来月の予定を決める。
来月もまた、横浜から直接行くことになる。
「じゃあ、また来月に」
そう言って別れた。
風さんたちも、
名残惜しそうに私の周りを
ふわり、ふわりと吹いていた。

今日の「そば旅」は、
思いがけず「鰻旅」へと姿を変えた。
でも、それもまたいい。

野田やの生粉打ちせいろは、
来月までのお楽しみ。
もしかしたら、無の味に出逢うには、
もうひと月の余白が
必要だったのかもしれない。

今日の紀州旅には、
今日だけの味があった。
そして最後に、ここで一句。

紀州にて
将軍食べて
暑気払い