目を開けると、もう横浜だった。

駅の改札を抜け、
エレベーターに乗り、地上へ。
扉が開いた。

眩しい光。
そして次の瞬間、
波のような風が一気に押し寄せてきた。

ふわっ。いや、もっと強く。
ぎゅっ。
まるで風に抱きしめられたようだった。
「あ、風さん」思わず笑顔になる。
「やっと逢えたわね。横浜の風さん。
三日ぶりね。逢えて嬉しい。
迎えに来てくれてありがとう」
風さんも、嬉しそうに私の髪を揺らした。

そして、もうひとり。
京都から私と一緒についてきてくれた風さん。「あなたもありがとう。
ずっと一緒についてきてくれたものね」
ふと思い出して聞いてみる。
「ねえ、筋斗雲に乗ってきたの? 
それとも自分で走ってきたの?」
「自分で走ってきたよ。
乗り慣れないものに乗ると、
なんだか変な感じだから」思わず笑った。
やっぱり風さんは、
風さんらしく飛んでくるのが一番なのね。

そして今、私と一緒にやってきた風さんと、
横浜で待っていてくれた風さんが、
ここで出逢った。
二人は手をつないだように、
私の周りをぐるぐる、ぐるぐる。
髪を揺らし、
頬を撫で、
身体いっぱいを包み込んでいく。
その風の音が、私には歌声のように聞こえた。

ああ。今朝の歓喜の歌だ。
朝、鳥や虫たちが奏でてくれたあの歌が、
250マイルを越えて、横浜までついてきた。
二人の風さんが歌っている。
透き通るような歌声。

心は朗らか、喜び満ちて。
心は楽しく、幸せあふれ。
響くは、われらの喜びの歌。

その歌声は
耳から入ってくるだけではなかった。
すうっと身体の中へ入り込み、
心へ染み込み、
身体中を巡っていく。
私はただ、その風の真ん中に立っていた。
「風さん、ありがとう。
すごく嬉しい。本当に心に響いたわ」

そして、ふと思った。
こちらにも、私の戻る場所がある。
向こうの街には、家族の待つ家がある。
そして横浜には、
風さんが待っていてくれる街がある。

どちらかを選ぶのではない。
どちらも、
私が「ただいま」と言える大切な場所。
そう思ったら、胸の奥がまた温かくなった。

やっぱり横浜がいい。
やっぱり横浜が好き。
そして――やっぱり、
横浜にいるあなたのそばがいい。

さあ。ここから六日間。
また新しい物語が始まる。
まずは部屋へ入り、荷物を片づけよう。

そして18:00。
今日逢えるのを心待ちにしていたあなた。
「25日に行くよ」
そう言ってくださったあの日から、
今日を楽しみにしていました。
横浜に着いて最初のランデブー。
まずはビールで、乾杯ね。

そして21:00。初めてお逢いするあなた。
まだお顔も知らないのに、
今から少しドキドキしています。
どんな時間になるのだろう。
楽しく、心に残る真夏の夜になりますように。

朝、向こうの町で生まれた歓喜は、
風さんと一緒に250マイルを駆け抜け、
今、横浜へ辿り着いた。
そして二人の風さんに迎えられ、
また新しい歓喜へ。

六日間の横浜物語。
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