遠い街の風を
まだ少し
肩に残したまま

私は
いつもの部屋へ
帰ってきた

扉を閉めた瞬間
音がひとつ
遠ざかり

代わりに
懐かしい静けさが
胸の奥へ
満ちてくる

旅のあいだ
きちんと結んでいたものが
ひとつ
またひとつ
ほどけてゆく

荷物より先に
心が
解かれてゆくようだった

いつもの場所
いつもの空気
いつもの匂い

何も変わらないことが
こんなにも
やさしい

風は
帰る場所を知っている

だからきっと
遠くへ行ける

そして私もまた
今日
ここへ戻り

少しずつ
少しずつ

誰でもない
私自身へ

還ってゆく

— Morimura