そろそろ13時になろうとしている。
近くのパン屋さんで買ってきてもらった
ベーグルサンドを、ぱくり。
そしてコーヒーをひと口。
よし。
今日は13時半から打ち合わせがある。
1時間半、長くても2時間くらいだろうか。
それなら16時頃までには家に帰れるかな。
そんなことを考えながら、
私は午後の予定へと向かった。
午前中は、かなり気合いを入れて仕事をした。
朝、目の前にあった仕事の山は、
もうすべて片付いた。
メールを返し、
案内文書を整え、
封筒に入れ、
領収書を作り、
小さなマイクロSDと格闘し、
途中からやってきた書類も片付けた。
山、攻略完了。
けれど、次に会社へ来るのは8日。
きっとその時には、
また新しい山ができているのだろう。
でも最近、ふと思う。
私、山が嫌いじゃない。
むしろ、山があると燃えてくる。
そして、その山が高ければ高いほど、
「さて、どうやって登ろう」と考え始める。
いくつも山が並んでいれば、なおさら面白い。
どの山から手をつけるのか。
どこまで一気に登るのか。
どれを先に片付ければ、次が楽になるのか。
そんな攻略法を考えている時間が、
私は結構好きなのだ。
やっぱり、
もともと考えることが好きなのかな。
こう書くと、
いつも何か難しいことや立派なことばかり
考えている人のようだけれど、
もちろんそんなことはない。
今日のお昼、何にしようかな。
晩ご飯、何を食べようかな。
明日は、どんな服を着ようかな。
そんな、どうでもいいようなことも、
私は一日中よく考えている。
そして今日。
晩ご飯のメニューは、もう決まっている。
ということは――。
家へ帰って晩ご飯までの時間。
若様を見ないといけない。
だって昨日は、
あれほど張り切っていたのに、
結局そのまま寝落ちしてしまった。
考えてみれば、
もう2日ほど若様の扉を
開いていないような気がする。
これはいけない。
今日はちゃんと、群青の扉を開かなくては。
そんなことを考えながら外へ出ると、
暖かい。
朝は20度にも届かなかったのに、
今は25度。
あの朝の涼しさは、
いったいどこへ行ったのだろう。
でも、暑いという感じではない。
風が、とても気持ちいい。
ああ。こういう日を、
秋の行楽日和というのだろうな。
今朝、家族の運転練習に付き合いながら、
そんな話をしていた。
「こんな日は、
お弁当を持ってどこかへ出かけたいね」
そう言いながら、昔のことを思い出した。
私、お弁当を作って出かけるのが、
結構好きだったんだ。
家には、何人かで食べるための
大きなお弁当箱もある。
取り皿もある。
俗にいう、ピクニックセット。
そういうものが、なぜか結構揃っている。
最近はなかなか、
そんな時間を作れなくなってしまったけれど。
「何か買って行く方が楽じゃない?」
そう聞いてみたら、
「いや、手作りのお弁当がいい」
そんな返事が返ってきた。
それが、なんだか嬉しかった。
だったら本当に、
お天気のいい日をひとつ選んで、
行ってみようかな。
大きなお弁当箱を久しぶりに出して。
何を詰めよう。
おにぎり?
卵焼き?
鮭の塩焼き?
そんなことを考え始めたら、
まだ予定も決まっていないのに、
もう私の頭の中では
お弁当作りが始まっている。
やっぱり私は、考えることが好きらしい。
仕事の山の攻略も。
今日の晩ご飯も。
明日の服も。
まだ決まっていないピクニックのお弁当も。
そして若様のことも。
全部、同じ頭の中で並行営業中。
――あ。
そうだった。
今日は新しい料理にも挑戦するんだった。
料理の仕方を調べておかなければ。
材料も確認して、
足りなければ帰りに買わなくてはいけない。
危ない、危ない。
若様のことばかり
考えている場合ではなかった。
……いや。若様も大事。
料理も大事。
どちらも忘れないようにしよう。
さて。
時計を見る。
そろそろ打ち合わせが始まる。
午前の山は、もう越えた。
午後は午後の山へ。
そしてその向こうには、
家と、若様と、新しい料理が待っている。
よし。
それでは――行ってこよう。
山越えて
秋風まとい
帰る道
心の先には
群青の扉
— Morimura
秋晴れて、山を越えゆく午後✨
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