本日の森村家の晩ご飯。
冷凍庫を開けると、
そこにはマダイの切り身があった。
よし。
今日はこれで鍋にしよう。
そう思って家族に、
「マダイで鍋にしようか」と声をかけてみた。
ところが。
「鍋はねえ……」
返事より先に、顔が答えている。
どうも今日は、
鍋の気分ではないらしい。
はい。
マダイ鍋、あっさり却下。
では、どうする。
そこで森村の頭の中の食べ物引き出しが、
ガラガラガラと開いた。
そうだ。お店で時々出てくる、
魚の上に野菜やきのこをたっぷり乗せて、
ふわっと柚子が香るホイル焼き。
あれ、おいしいのよね。
「じゃあ、ホイル焼きにしてみる?」
すると今度は、
「あ、それいい」
早い。
さっきまでの微妙な顔はどこへ行った。
よし。
本日の献立、急きょ変更。
マダイときのこのホイル包み。
……ただし、ここで大問題がひとつ。
森村、ホイル焼きを作ったことがない。
そこでまず、
アルミホイル探しから始まった。
ガサゴソ。ガサゴソ。
「あった!」よし。
道具は揃った。
ここで突如、森村家の台所に鐘が鳴る。
カーン。
本日より開講。
モリリンとヒカリンのお料理教室。
本日の生徒。
勢い担当、モリリン。
丁寧担当、ヒカリン。
そして少し後ろから二人を監督するのは、
先生・森村。
モリリン
「先生! まず何をしたらいいですか!」
森村
「マダイを置いて」
モリリン
「置きました!」
ヒカリン
「先生、きのこは?」
森村
「たっぷり」
モリリン
「野菜は?」
森村
「それもたっぷり」
ヒカリン
「先生、全部たっぷりです」
森村
「いいの。
ホイル焼きは包めればなんとかなる」
ヒカリン
「先生、初めてですよね?」
森村
「……そこは今、確認しなくていい」
アルミホイルの上に、
マダイをそっと置く。
その上に野菜。
そして、
きのこをどっさり。
こういうところでモリリンは遠慮しない。
「もっと乗せちゃえ」とばかりに、
どんどん積んでいく。
するとヒカリンが、
「モリリン、それ包めなくならない?」
と横から冷静なひと言。
森村先生も後ろからみている。
「うん。ちょっと欲張りすぎ」
モリリン、しぶしぶ少し戻す。
ここで役割分担が、
なんとなく決まってきた。
モリリンは、とりあえずやってみる係。
ヒカリンは、ちょっと待ってと止める係。
そして森村は、最終的になんとかする係。
なんとも頼もしい料理教室である。
そして最後は、
ホイルをふんわり包んでいく。
モリリン
「ぎゅっと閉じます!」
森村
「ぎゅっとしすぎない」
ヒカリン
「ふんわり、ですよ」
モリリン
「さっきからヒカリン、先生みたい」
森村
「そのうち先生交代する?」
ヒカリン
「遠慮しておきます」
そんなことを言いながら、
マダイときのこは無事、
銀色のホイルの中へ。
あとは、
おいしくなって
出てきてくれることを願うのみ。
初挑戦なんだから、
多少のことは気にしない。
私はもともと、
何時間もかけて手の込んだ料理を作るより、
テキパキ。
パパッと。
それなりにおいしく。
こちらの方が性に合っている。
だって一番好きなのは、
料理をすることより、食べること。
おいしいものを食べたい。
だから作る。
実にわかりやすい。
そして、
今日みたいに冷蔵庫や冷凍庫を見ながら、
「あ、これ作ってみよう」と
思いつくのも楽しい。
定番料理もいい。
初挑戦もいい。
成功したら、
また作ればいい。
少しくらい失敗したら、
モリリンとヒカリンのせいに
してしまえばいい。……こら。
というわけで、自宅へ帰ったときだけ開く、
小さなお料理教室。
記念すべき第一回は、
マダイときのこのホイル包み。
さて。
銀色の包みを開けた瞬間、
どんな香りが立ち上るのか。
本日の先生・森村から、
最後にひと言。
「料理は勢い。
あとはおいしく食べれば大成功」
モリリン
「先生、それでいいんですか?」
ヒカリン
「森村家では、たぶん正解です」
はい。
本日のお料理教室、
これにて終了。
次回はもしかすると——森村先生の得意技、
だし巻き。
モリリン、ヒカリン。
今のうちに、
卵を巻く練習をしておくように。
— Morimura
モリリンとヒカリンのお料理教室第一回|マダイときのこのホイル包み
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