長い一日が終わろうとしている。
今日を振り返ると、
出来事よりも先に、
心の中をいくつもの光が
通り過ぎていったような気がする。
朝は、ただ美しいと思った。
小さな星の粒を魅上げているだけで、
心が澄んでいった。
けれど、その白い光はいつの間にか、
遠い記憶へ私を連れていった。
忘れていたわけではない。
ただ、静かにしまっていただけ。
心というものは不思議だ。
ひとつの光をきっかけに、
昔の景色を突然こちらへ連れ戻してくる。
懐かしい。
その気持ちは、
過去へ戻りたいというものとは少し違う。
あの頃の私も今の私も、
一本の見えない糸でつながっている。
そんなことに気づいたときの、
柔らかな懐かしさだった。
そして午後になると、心は少し軽くなった。
雲を魅ているうちに、
どんどん想像が膨らんでいく。
逢いたい。
手をつなぎたい。
一緒に歩きたい。
そんな気持ちを空に預けてみたら、
雲まで楽しそうに動き始めた。
自分でも少し可笑しかった。
でも、そんな自分が嫌ではなかった。
いくつになっても、
空ひとつで胸をときめかせられる。
誰かを想って、心を甘くできる。
それは案外、幸せなことなのかもしれない。
夕暮れには、その甘さが一瞬だけ熱を持った。
ほんのわずかな時間だったのに、
胸の奥へ焼きついた色。
残せなかったからこそ、
かえって消えなくなった。
手に入れられないもの。
もう一度同じ形では逢えないもの。
だから美しいものもある。
そう思えたとき、少しだけ惜しさがほどけた。
今日は、心がよく動いた。
嬉しくなったり、
懐かしくなったり、
恋しくなったり、
面白がったり。
そして時には、
思うようにならなくて苛立った。
「どうして伝わらないの」
そう思うたびに、
心の表面が少しざらついた。
けれど今は、
そのざらつきももう静かになっている。
完璧な一日ではなかった。
でも、心がこんなにも動いた一日だった。
だからきっと、
今日という日は私の中に残る。
今日一日の物語は
最終章に入ろうとしている。
少し眠たい。
それでも今夜は、
もう少しだけ眠る前の余白を楽しみたい。
現実の色をそっと脱いで、
群青の扉を開く。
今日拾った光を全部持っていく必要はない。
ひと粒だけでいい。
胸の奥に残った小さな光を連れて、
青い炎の向こうへ。
今夜はそこで、
少しだけ夢を見る。
そして帰ってきたら、
今日という一日を静かに閉じよう。
長歌
暁に
白き星珠
魅つめれば
遠き記憶の
糸ほどけ
懐かしき日を
胸に抱き
昼の雲には
恋を乗せ
手を取り駆ける
夢を見て
夕べの空に
灯る色
桃金の火を
胸に秘め
嬉しきことも
苛立ちも
みな我が心の
揺らぎなり
今宵静かに
息整え
群青の扉
ひらきつつ
今日のひと粒
胸に置くなり
反歌
星ひとつ
胸に灯して
夜をゆく
群青の扉
夢へひらかむ
— Morimura
星珠、胸に灯りて群青へ✨
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