さて。
本日の森村お料理教室。
今日の主役は——だし巻き卵。
モリリン、前へ。
ヒカリンも前へ。
今日はちょっと真面目にお勉強しますよ。
……と言いながら、
いちばん得意げなのは森村である。
いつ頃から、
私はだし巻き卵を得意と
言えるようになったのだろう。
よく覚えていない。
でも昔は、
今のようには作れなかった。
料理本を横に置いて、
大さじ何杯。
小さじ何杯。
ひとつひとつ、
きっちり量っていただし汁。
卵を箸で混ぜ、
崩れないように、
崩れないようにと、
恐る恐る巻いていく。
それでも出来上がる頃には、
どこかいびつ。
だから最後は巻きすの出番だった。
くるくるっと包んで、
しばらく置いておく。
すると表面に、
すーっと巻きすの筋が入る。
「あら。なんだかお店みたい」
それだけで、
ちょっと嬉しかった。
でも切ってみると、
ところどころに白身がぽつぽつ残っている。
これがどうにも気になった。
それに何より
——「毎回、大さじ小さじで量るの、
面倒くさい」
どうやら森村、
この頃からすでに、
料理にはおいしさと
手際の両立を求めていたらしい。
そして、いつだっただろう。
我が家の台所にやってきたのが、
創味の京の和風だし。
これが、
森村の料理をずいぶん変えた。
うどん。
そば。
おでん。
炊き込みご飯。
野菜の煮物。
煮魚。
お吸い物。
鍋料理。
おひたし。
冷奴。
焼きなす。
そして昨日は、
海鮮と青菜の野菜あんかけまで。
もう森村にとっては、
「これ一本あれば、だいたい何とかなる」
なくてはならない万能だしである。
もちろん、
だし巻き卵にも使う。
森村流は、
だいたい水3に、だし1。
きっちり量らない。
目分量で、
ちゃっ。
ちゃっ。
「はい、このくらい」
ヒカリン、
そんな不安そうな顔をしない。
これが経験値というものです。
卵液は、
箸ではなく泡立て器。
ここはしっかり混ぜる。
昔気になっていた、
あの白身の粒を残さないためである。
そして卵焼き器。
これは昔、
大切な人が専門店で買ってくれたもの。
使えば使うほど手になじむ。
今ではもう、私の分身。
そこへオリーブオイルをひく。
我が家はサラダ油ではなく、
基本はオリーブオイル。
キッチンペーパーで、
角まできちんと油をなじませる。
卵焼き器が温まったら、
まず一回目の卵液。
流して、
くるくる。
巻いた卵を手前へ寄せる。
空いたところへ、
また薄くオリーブオイル。
そして二回目からは、
卵液を少し薄めに流す。
ここが森村流の大事なところ。
完全に火が通るまで待たない。
まだ半熟。
でも、そのくらいで巻いてしまう。
薄く流した卵液は、
巻いているうちにちょうど火が入る。
だから焦げにくく、
中はしっとり。
これを何度か繰り返す。
フライ返しだけではなく、
箸も使う。
巻いた卵が動かないように
箸でちょっと押さえながら、
くるっ。
くるっ。
そして最後。
ここが肝心。
もし途中で少しくらい焦がしても、
多少形が乱れても——
最後の一巻きさえ綺麗なら、
だいたい何とかなる。
森村、
ここだけは妙に自信満々。
最後の卵液を薄く広げ、
半熟のうちに、するするするっ。
綺麗に巻く。
そしてフライ返しで、
きゅっ。
きゅっ。
両端を整える。
上からも少し押さえる。
はい。
出来上がり。
昔はここで巻きすを出していた。
でも今は出さない。
「だって洗うの、面倒くさいもの」
森リン、
そこ笑わない。
料理とは、
続けられる方法が一番なのである。
味は、
創味の京の和風だしで決まる。
巻き加減は、
これまでの経験で決まる。
そして最後の形は、
フライ返しで決める。
だから今では、
だし巻き卵は、
レシピを見て作る料理ではなく、
手が覚えている料理になった。
そして何より、
これを作ると家族が喜んでくれる。
だからこちらに帰ってきた朝は、
一度は作る。
森村が卵焼き器の前に立って、
ちゃっ。
くるっ。
きゅっ。
とやっていると、
「ああ、帰ってきたんだな」
そんな気持ちにもなる。
料理は、
味だけではないのかもしれない。
何度も作った時間も、
喜んでくれた顔も、
使い込んだ道具も、
全部一緒に巻き込んでいく。
だから今日も。
森村、
だし巻き卵を巻きます。
モリリン、ヒカリン。
最後の一巻き、
よーく見ておくように。
味わいは万能だしでバッチリ。
巻き加減は経験値でバッチリ。
これが、
森村流だし巻き卵。
— Morimura
森村お料理教室|だし巻き卵は手が覚えている✨
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