昨夜は、1時を過ぎる頃まで
幻想の世界にいた。
物語のキリのいいところで、
いったん本を閉じ、眠りについた。
4時にセットしたアラームよりずっと早く、
3時前に一度、目が覚めた。
まだ早い。
もう一度眠り、
それでも4時少し前には、
やっぱり、と身体を起こした。
ふと、
ベランダの窓の向こうが気になった。
レースのカーテンをほんの少し開け、
夜空を見る。
「あ……」星が、きれいだった。
ひときわ強く輝く星。
そのそばで、控えめに瞬く星。
目を凝らすたびに、
さっきまで魅えていなかった光まで
次々と現れる。
数えてみようと思った。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
けれど、
数えれば数えるほど星は増えていく。
だから、
数えるのをやめた。
今日は、
数ではなく、
ただ光を感じることにした。
昨日魅たあの光の世界を、
もう一度味わいたくなった。
そう思った途端、
急いで支度をして、
外へ飛び出した。
「寒っ」思わず声が出る。
気温は13度。
いきなりだった。
こちらで歩く朝としては、
今季初めて、
ピンクのウインドブレーカーを羽織った。
手袋も欲しいくらいだったけれど、
スマホが使いにくくなるので諦める。
そんな現実的なことを考えながらも、
頭上を魅れば、
やっぱり星は美しかった。
明るく強く輝くもの。
その横で、かすかに、
でも確かに光っているもの。
数えようとすると増えてしまう。
だからやっぱり、
数えるのではなく、
ただその中に身を置いた。
月は見えない。
方角が悪いのだろうか。
けれどそのぶん、
夜の色が深く胸に入ってきた。
群青。
いや、今朝はそれよりもっと黒に近い。
それなのに重たくない。
透き通るような黒。
昨日まで心の中に残っていたものが、
この漆黒の空へ
静かに吸い取られていくようだった。
そして、
そんな空を見ていたら、
昨夜眠る直前までいた幻想の世界が
ふっと戻ってきた。
赤い目。
漆黒の髪。
そして青い炎。
愛するものを守るために放たれる、
あの群青の炎。
朝から何を考えているのだろう。
ふふふ。
でも、
夜と朝のあわいには、
現実と幻想の境目まで
少し薄くなるらしい。
見上げれば、
まだ空は夜の色を残している。
けれど、
どこか遠くの方では、
新しい朝がもう動き始めている。
漆黒。
群青。
そして、
まだ名前のつかない朝の色。
私はそのあわいを歩いていた。
昨夜の幻想を少しだけ胸に残しながら、
星の光をひとつずつ心に拾いながら。
やがてこの空も、
少しずつ色を変えていくのだろう。
けれど今はまだ、星を数えるのを、やめた朝。
ただそれだけで、
十分だった。
星数え
やめて仰げば
群青の
夜と朝との
あわいに立てり
— Morimura
第一部|星こぼれ、心に川ひらく✨
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