馬車道へ入ると、
ほんの少しだけ
別の世界へ足を踏み入れたような気がした。

十五分ほどの魔法。

耳元にはいつしか
「また君に恋してる」の旋律が流れている。

そして万国橋に立ったとき、
ふと昔の物語の橋が胸をよぎった。

橋とは不思議な場所だと思う。
こちら側から向こう側へ渡るだけなのに、
別々の時間を歩いていた二人が、
偶然同じ場所で巡り逢うこともある。

私たちだって、そうなのかもしれない。
すれ違っていても何
の不思議もなかった時の中で、
偶然あなたに逢った。

それから時間を重ね、
言葉を重ね、
いつの間にか
心まで一緒に旅をするようになった。

そして今になって初めて、
私はそのことを実感していた。
出逢えたことそのものが、奇跡だったのだ。
逢うたびに恋をするということは、
逢うたびに、
あなたに出逢えた奇跡を
もう一度知ることなのかもしれない。

万国橋を渡り切る。
魔法から覚めたのか。
それとも、
ようやく本当の気持ちに気づいたのか。
よくわからない。
ただ風さんだけが、
そんな私を丸ごと包んで、
すうっと心の中へ息を吹き込んでくれた。