新港の花々が、
いつもより美しく輝いて見えた。

花が変わったのではない。
きっと魅ている私の心が変わっていた。

そんな中で、
ひときわ大きな木が目に入った。

何度も歩いてきた場所なのに、
なぜ今まで気づかなかったのだろう。

その木だけが、
まるで何かを宿しているように
神々しく魅えた。

クスノキだった。
大通り公園で出逢ったクスノキ。
楠木正成公から感じた、父としての愛。
人が抱えてきた喜びも、哀しみも、
何も言わず受け止めてきたような大きな幹。

けれど今朝、
私の前に立つクスノキから感じたものは、
「勝利」という言葉ではなかった。

愛と祝福。

ふと、
銀の線で描かれた
アフロディーテが心に浮かんだ。
月桂樹の冠を頭にいただき、
クスノキの中から、
風のようにすうっと現れる。
風さんにも少し似た、
愛と祝福の女神。

「そのままでいいのよ」
そんな声が聞こえた気がした。
また恋をした心も、
まだ消えない余韻も、
すべて抱えていていいのだと。

クスノキの葉が揺れた。
もしかしたら本当に、
木には精が住んでいるのかもしれない。
少なくとも今朝の私には、
そう思えた。