目が覚めた。
枕元の時計を見ると、23時10分。
ちゃんとセットしておいた
アラームの音だった。
「……あれ、私、こんなに寝てた?」
21時くらいから横になっていたから、
どうやらたっぷり
2時間ほど眠っていたらしい。
モリリンが呆れたように覗き込む。
「森村さん、寝たねえ」
ヒカリンも、ころんと丸まりながら頷いた。
「うん。これはもう仮眠じゃないね」
「しっかり睡眠です」
「ふたりとも、うるさいわね」
そう言いながらも、
身体はずいぶん軽くなっていた。
外へ出てみる。
ひゅう。
頬を撫でていった夜の風に、
思わず肩をすくめた。
「寒っ」
昼間とはまるで違う。
横浜の夜は、
いつの間にかずいぶん秋を深くしていた。
すると、
どこからともなく風さん。
「だから言っただろ。夜は冷えるって」
モリリンが振り返る。
「あ、風さん来た」
ヒカリンも耳をぴん。
「今日はずっといたんじゃない?」
風さんは答えず、
また森村の頬をひと撫で。
ふわり。
いや。
今夜のそれは、
ふわりというより少し冷たい。
「ねえ風さん。今日はもう終わりかな」
しばらく待ってみた夜。
けれど、
どうやら今日は
このまま静かに閉じていくらしい。
モリリンが腕を組んだ。
「森村さん。もう諦めよう」
「諦めるって言い方、なんか嫌ねえ」
「じゃあ、今日はこれでおしまい」
ヒカリンが続ける。
「うん。その方がいい。
だって森村さん、
2時間も寝たのにまだ眠そうだもん」
「それは……そうかもしれない」
風さんが笑ったような気がした。
「静かな夜も悪くない」
確かに。
ドアが次々と開く夜もあれば、
こうして何も起こらないまま、
ただ時間だけが静かに流れていく夜もある。
それもまた、
一日のひとつの形なのだろう。
「じゃ、帰る準備しようか」
モリリンが号令をかける。
「アイマスク回収!」
ヒカリンが続く。
「忘れ物確認!」
風さんまで加わった。
「コートはちゃんと着ろよ」
「はいはい」荷物をまとめる。
身支度を整える。
時間になったら、
すぐに帰れるように。
今夜はもう、
次のドアを待ちながら身構えなくてもいい。
静かな夜を、
静かな夜のまま閉じればいい。
モリリンが小さなのれんに手をかける。
「それでは森村さん」
ヒカリンもその横へ。
「今日もお疲れさまでした」
そして風さんが、
最後にそっと吹いた。
「帰ろう」
うん。
今日はもう帰ろう。
冷たい夜風に背中を押されながら、
森村、本日の営業を終了します。
のれん、下ろします。
— Morimura
冷たい風に背中を押されて✨
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