長い一日が終わろうとしている。

夜の風の中で空を魅つめていると、
今日の心も、
あの群青のようだったのかも
しれないと思った。

一色に見えて、
ほんとうは一色ではない。
透き通る群青の中に、
白とも灰色ともつかない淡いものが、
煙のように、
もあもあと浮かんでは流れていく。
心もきっと同じなのだろう。

ほんの小さな欲しい。
ほんの小さな嬉しい。
少しのときめき。
ちょっとした満足。
そしてまた次の何かへ心が動く。
どれも大きな出来事ではないのに、
一日の中で心は休むことなく、
こんなにもたくさんの色を生み出している。

そう思うと、
心というものはずいぶん忙しい。
もしかしたら眠っている間でさえ、
私の知らないところで何かを感じ、
何かをほどき、
静かに次の色へと移っているのかもしれない。

けれど今日は、
そんな忙しい心とは反対に、
身体はどこか深いところで、
ゆっくりと休んでいたような気がする。

だからなのだろうか。
一日を閉じようとしている今、
不思議と泣きたくなるような思いはない。

何かを得たからでも、
何かを諦めたからでもない。
ただ、「今日はこれでいい」
そんな静かな気持ちがある。

最後まで群青だった今日。
けれど、その群青の中には、
私にしか魅えないほど淡い、
たくさんの心の粒が浮かんでいた。

それをひとつずつ数える必要はない。
流れていったものは、
流れていったままでいい。

今夜はただ、
冷たい風の中でそれを魅送りながら、
静かに今日を閉じよう。

長歌

群青の
空にただよう
淡きもの
白とも灰とも
名づけ得ぬまま
わが心
ひと日のうちに
揺れ動き
嬉しきことも
欲しきことも
小さき思い
生まれては消え
また生まれ
眠れる時も
知らぬ間に
心はきっと
旅をして
されどこの身は
静かに休み
今宵ただ
泣くこともなく
風の中
今日という日を
そっと閉じゆく

反歌

群青に
浮かぶ心の
粒ひとつ
名もつけぬまま
夜風へ返す

— Morimura