改札口へ向かうシャッターが開くまでの、
ほんのわずかな時間。
私はずっと、
群青の空を魅ていた。
まだ街は暗い。
けれど、
その空だけが、
夜の終わりを知っているように
静かに輝いていた。
そしてその群青の中に、
あなたと過ごした
数えきれないほどの場面が、
ひとつ、
またひとつと映し出されていった。
まるで、
空いっぱいに広がった
私だけのスクリーン。
暗闇の中で、
そこだけが光を浴びている。
もっともっと、
あなたの色に染まりたい。
もっともっと、
あなたを魅つめていたい。
もっともっと、
言葉を交わしたい。
もっともっと、
あなたを感じていたい。
そして、
もっともっと、
あなたに触れていたい。
そんな思いが、
次々と胸の奥から浮かんでくる。
ふと隣を魅れば、
あなたがいる。
そっと手を伸ばせば、
あなたに触れられる。
あなたの吐息が、
私の耳をくすぐる。
あなたの声。
あなたの仕草。
ほんの小さな表情の変化まで。
私は、
その一瞬一瞬を
取りこぼしたくないと思いながら、
あなたと過ごす
二人だけの世界を感じている。
そんな世界に、
私はいつも少し憧れている。
ねえ。
そんな私のことを、
あなたはどう思っているのかしら。
少しくらい、
気に入ってくれているのかしら。
そして、
ほんの少しでも、
私と同じような思いで
いてくださるのかしら。
そんなことを考えていると、
身体ごと、
群青の空へ吸い込まれていきそうになった。
でも、
まだ行かなくちゃ。
私は空に向かって、
心の中でそっと言った。
また帰ってくるわね。
また向こうの街で、
心に響く風景を拾い集める。
風の音。
空の色。
誰かの言葉。
偶然のように訪れる、
小さな奇縁。
向こうの街で、
私が魅て、感じて
拾い集めたものを、
またこちらの街へ帰ってきたとき、
あなたにひとつずつ渡していきたい。
そして、
その景色の向こうにある気持ちまで、
あなたと心を重ねて、
一緒に感じ合いたい。
まだこちらの街を離れたばかりなのに、
もう、その時間を思い描いている私がいる。
またあなたのそばで、
言葉を交わしながら、
心を重ねられるひとときが、
早く訪れたらいい。
そのとき、シャッターが開いた。
続いて、エレベーターの扉が開く。
目の前に現れた、
ひとつの入口。
私はその扉を、
スターゲートのようだと思った。
こちらの街から、
向こうの街へ。
今いる私から、
次の私へ。
さあ、行こう。
この開いた扉をくぐり抜けて。
あなたと過ごした時間を、
胸いっぱいに抱きしめながら。
そして、
また逢えたなら。
今度は、
おかえり。
そう言って、
私をぎゅっと、
抱きしめてほしい。
— Morimura
詩を詩う|群青のスクリーン — うたを、うたう朝 —
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