ホテルから待機所に戻り、
先ほどの余韻を日記に綴った。

そして、おにぎりを食べて、
ゴロンと横になる。

時計を見ると、20時12分。
ほんの少し休むつもりが、
どうやら、そのまま眠ってしまったらしい。

次に目を覚ましたのは、21時20分。
お店からの電話だった。
あら、お仕事が入ったみたい。
眠りから覚めたばかりの身体を起こし、
身支度を整えて外へ出る。

すると、夜の空気が思いのほか生ぬるい。
10月も半ばだというのに、
今夜はコートがいらないほど。

秋の夜風も、今夜ばかりは
少しお休みしているのかしら。

そして、次のドアが開いた。
開いたドアの向こうから、
ちょこんと顔を覗かせたあなた。
なんとも優しい笑顔。

けれど、歩く足元が少しおぼつかない。
あらあら、大丈夫?

お部屋に入ると、
デスクの上にはお酒の缶がずらり。
「もう、だいぶ飲んでいらっしゃるの?」
「飲んでる」
なんとも素直なお返事。

そこから始まったのは、
取り留めもないおしゃべりだった。

初めてお逢いしたというのに、
不思議なほど話しやすい。
愛嬌があって、フレンドリーで、
飾らない人柄がなんとも微笑ましい。

そんなあなたが、
ちょっと得意そうに披露してくださった
ワンタッチの早業。

あら、お上手!思わず笑ってしまった。
それから、ふたりの時間が始まった。

けれど、どうやら今夜のあなたは、
お酒の方が少し勝っているみたい。
優しく触れ合いながら過ごしているうちに、
いつの間にか、あなたは夢の中へ。

あらあら。

本当に眠ってしまったの?
声をかけても、
気持ちよさそうに眠っていらっしゃる。
なんだか、起こすのも気の毒になった。

そっとタオルで身体を拭いて差し上げ、
身の回りを整える。
そして、眠りを妨げないように、
静かにお部屋を後にした。

迎えの車に乗り込んで、
ふと思った。

あれだけ召し上がっていたのだから、
もしかしたら明日の朝、
私が来たことさえ
覚えていらっしゃらないかもしれないわね。

そう思うと、なんだか可笑しくなった。
でも、それもまた、
今夜だけの小さな物語。

優しい笑顔で迎えてくださったあなたが、
最後には安心したように眠ってしまった。
そんな出逢いも、悪くない。
どうぞ、今夜はゆっくりおやすみなさい。

そして明日の朝、
少しでも私のことを
思い出してくださったなら嬉しいな。

— Morimura