三塔のあわいに、心満ちて✨
勃つねで応援-
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共有で応援
長い一日が終わろうとしている。
今夜は、なんだか不思議な気持ちでいる。
何かを成し遂げたという満足感とも違う。
嬉しいことがあったという喜びだけでもない。
もっと静かで、もっと深いところに、
温かなものが満ちている。
朝の私は、何かを探していた。
まだ知らない風景。
まだ気づいていない美しさ。
そして、そこから生まれる新しい物語。
けれど今、こうして一日を振り返ると、
本当に探していたものは、
目の前の景色ではなかったような気がする。
私は、自分の心が動く瞬間を
探していたのかもしれない。
見慣れた街が、ある日突然、
まったく違う表情を魅せてくれる。
何も語らないはずの建物が、
いつの間にか言葉を持ち、
そこに生きる人々の息遣いまで
聞こえてくるようになる。
そんな自分の想像力が、
時々、可笑しくもあり、
そして、たまらなく愛おしくなる。
若い頃の私は、
何かを書こうとするとき、
心の奥にある言葉を懸命に探していた。
それが今では、
探すことさえ忘れた頃に
物語の方から訪ねてくる。
これは、歳月が私にくれた
小さな贈り物なのだろうか。
それとも、
ようやく自分の心に
素直になれたということなのだろうか。
答えは、まだわからない。
でも、わからないままでいい。
何もかもに答えを求めなくても、
心が満たされることはあるのだから。
そして、今日という一日には、
もうひとつの温もりがあった。
人と人との心の距離。
逢えない時間があっても、
変わらずにいてくれる優しさがある。
久しぶりに交わす笑顔に、
過ぎた時間がそっとほどけていく。
その瞬間、
言葉では説明できない安らぎが
胸の奥に広がっていく。
私は、そんな時間が好きだ。
華やかな言葉も、
特別な約束もいらない。
ただ、そこにいる自分が
自然に微笑んでいられること。
それだけで、
十分に幸せなのだと思う。
そういえば、朝の私は
何かを見つけようとしていた。
けれど夜の私は、
もう何も探していない。
不思議なものだ。
探し求めていたときには
気づかなかったものが、
探すことをやめた途端、
こんなにもたくさん
心の中にあることに気づくなんて。
きっと、心が満たされるというのは、
何かを手に入れることではない。
すでに自分の中にあるものに
気づくことなのかもしれない。
そして、もうひとつ。
今日の私が、
昨日の私より少しだけ好きになれたなら。
それは、何より嬉しいことだと思う。
明日もまた、
私は何かを探しに出かけるだろう。
けれど、見つからない日があってもいい。
物語が生まれない朝があってもいい。
心が動かない静かな時間さえ、
きっと、いつかの私を
豊かにしてくれるのだから。
今夜はもう、
何かを考えることも、
答えを探すこともやめよう。
ただ、この満ち足りた気持ちを
そのまま胸に抱いていたい。
今日という一日は、
私に何かを教えようとしたのではない。
私が私らしく生きていることを、
そっと確かめさせてくれたのだと思う。
ありがとう。
今日もまた、
私の心は、よく笑い、よく揺れ、
そして、たくさんのものを愛おしく思った。
そんな自分を、
今夜は静かに褒めてあげたい。
明日の私に、
今日のぬくもりを少しだけ残して。
そっと、心の灯を落とそう。
長歌
朝まだき
探す心を
抱きしめて
見慣れた道に
風を聞く
三つの塔に
息宿り
時のあわいに
胸ひらく
逢う人の声
あたたかく
夜の静けさ
身に沁みる
探す手を止め
今ここに
満ちているもの
ただ抱きて
明日の風待つ
心やすらぐ
反歌
見つけたと
思いし光
胸のうち
今日の余白に
静かに満ちぬ
— Morimura