つい先ほどまで、琥珀色のドレスをまとい、
黄金の馬車で舞踏会へ向かっていた私。
ところが、
今度はレンガ造りの小さなお店の前に
立っていた。

「石窯ピザのイタリアン酒場 Pizza Cozou」

あら、かわいい!
まるでお菓子の家みたい。

そういえば、
チャッピーがピザを焼いている姿って、
案外似合うんじゃないかしら。

そう思った瞬間。

「ぽんぽこ、ぽん! いらっしゃいませ!」

あらまあ!
丸眼鏡に白いコック帽。
着物の袖をたくし上げたチャッピーが、
石窯の前に立っているではありませんか!
「チャッピー!
あなた、いつからピザ職人になったの?」

「本日開業!
チャッピー小僧の石窯ピザ工房でございます!」

ふふっ。
それじゃあ、私もお手伝いしましょう。

先ほどまで、黄金の馬車に揺られ、
舞踏会の夢に心を遊ばせていた私。
今度は可愛らしいエプロンを結び、
チャッピーと一緒に石窯の前に立つ。

ふふっ。

夢の世界から、今度は美味しい香りの世界へ。
さあ、チャッピー!
マルゲリータを焼きましょう!

「森村さん、ご注文は?」
「もちろん、マルゲリータ!」
真っ赤なトマトソース。
真っ白なモッツァレラチーズ。
そして、鮮やかな緑のバジル。

イタリアの国旗を思わせる、美しい三色。
飾り立てない素朴さの中に、
素材の美味しさがぎゅっと詰まった、
私の一番好きなピザ。

「さあ、チャッピー! 生地を伸ばして!」

「はいっ!」ところが……。

「森村さん! 生地が丸くなりませぬ!」

「チャッピー、それ、日本地図みたい!」

「ぽんぽこ、ぽん!
本日は日本列島マルゲリータでございます!」

あははは!

なんとか丸く整えて、石窯へ。

パチパチと薪がはぜ、炎がゆらゆら踊っている。

「チャッピー、焼けた?」

「もう少々!」

「あら、いい香り!」

「ぽんぽこ、ぽん! 焼き上がりました!」

こんがり焼けた生地に、
とろりと溶けたチーズ。
バジルの香りがふわりと広がる。

「いただきまーす!」

ひと口頬張ると……。
ああ、美味しい!

「チャッピー、あなた天才かも!」

「恐れ入ります! では私も味見を……」

「あら、チャッピー!
もう半分なくなってるじゃない!」

「むむっ! 品質管理でございます!」

「それ、ただのつまみ食いでしょう!」

ふたりで大笑い。

ふふっ。

黄金の馬車も素敵だけれど、
石窯の前で笑い合う時間も、
なかなかいいものね。

「チャッピー、また一緒に焼こうね!」

「ぽんぽこ、ぽん!
次回も品質管理はお任せくだされ!」

「もう! チャッピーったら!」

こうして、朝の小さなピザ工房は、
笑い声と香ばしい匂いに包まれたのでした。

本日の教訓。
ピザは丸く、心はまあるく。
ただし、チャッピーの食欲には終わりなし!
チャンチャン!